The Notorious B.I.G. - Mo Money Mo Problems                  (feat. Puff Daddy & Mase)

2023年11月11日

back to 1997


今回の英単語:Humble (1:28)

意味:謙虚な、腰が低い、つつましい、質素な

「夢のためには謙虚な姿勢で、どっしり構えて、チャンスをモノにする。」という心構えを語ってますね。


【音楽で人生を切り開いて走り続ける覚悟と根性!】


90年代はヒップホップやラップが総合ランキングにガンガン入ってくるようになりました。

にわかファン的にヒット曲ばかり聴いていた私ですら東やら西やら区別がつくようになっていました。

こちらは東の一大勢力、バッド・ボーイ・レコードの大ヒット曲です。

この曲のキャッチーさ、はっきり言って反則です!

寿司と焼肉とカレーが並んでいるような状態です!


冒頭から洋楽に詳しい方は一発でわかるダイアナ・ロスの「I'm Coming Out」をゴリゴリ使っています。

私はもちろん原曲を知っていました…というのは嘘で、後追いで原曲を知りました。

正直でしょ?


原曲にズンズンなベース音を加え、アクセントのドラム音とスクラッチ音が延々と繰り返されるトラック。

トラックだけ聴いても思わず体がリズムを取ってしまいます。

既にカッコいい原曲はコチラ

原曲のオイシイ部分を使ってキャッチーにする「サンプリング」。

この頃によく聞くようになった言葉だったと思います。


いきなり男臭いラップが始まるのではなく、女性ヴォーカルから耳に入るのがミソですね。

「アーイ  カミーーン」というダイアナ・ロス(本人?)の声で「おっ!?」と注意をひきますね。

そこから重なるように優しく合わせるように歌う女性の声が聴こえてきて期待を高めます。

この終始聴こえる自由なフワフワスキャットがゴリゴリな曲を陰で支えています。

ヤンチャすぎる男の子たちを包み込むような母性的雰囲気を感じますね。


さて、歌詞の方は正直、ネットのない時代にはほとんど意味がわかりませんでした。

テーマは「お金持ったら問題がいっぱい起こる」ということは想像できますね。

曲調から「俺たちはガンガン行くぜ!」みたいな内容かな…と漠然と思っていた程度でした。

もちろん、そういう部分もありますが結構色んなバックグラウンドを語ったラップになっていました。

歌詞検索とかできる時代になって良かったです。


この曲はメイス、パフ・ダディ、ノトーリアスB.I.G.がそれぞれラップしています。

それぞれがこのテーマについてそれぞれの視点で語っています。


まずはメイスくんから。

どうやら彼は91年にデビューしていたようですが、やっとこの時期にブレイクできた喜びを語っています。

「生活は激変したけど中身は変わっていない。」

「でももっと名を上げたい。」

「ただ、調子に乗る事なく、女性に現(うつつ)を抜かす事もしない。」

「謙虚にかつ抜け目なくチャンスをモノにするんだ。」

という感じのようです。

飄々として掴みどころのないユルいラップが持ち味ですが、結構したたかです。

苦い思い出の多いハーレムの生活から大成功を納めた彼の自信と喜び、恩人への感謝を感じます。

そして過去の自分と同じような境遇の人へ夢を掴むためのエールのようにも感じます。


次はパフ・ダディさん。

この時代、ヒット連発の彼らしくノリにノっている現状をドヤっています。

「俺が飛ぶのより死ぬのが見たいんだろ?」

「家には帰らねぇよ、ヨットに電話してくれ。」

「お前らより金稼いでる仲間たちがいるぜ!」

「お前らより遥かに強いチームだぜ!」

「夜も眩ゆいタイムズスクエアよりも俺はビッグだぜ!(光り輝いてるぜってこと?)」

等とイケイケっぷりをぶつけています。

10年後もトップにいる宣言!とてもエネルギッシュです。


そして遂にノトーリアスB.I.G.様降臨!

麻薬取締局、連邦捜査員、盗聴、拳銃と不穏な雰囲気がグッと増します。

ドラッグやアブナイ事が彼のバックグラウンドにはある事を匂わせていますね。

しかし暗い世界から音楽の世界へ進み、聴衆を沸かせて稼ぐ夢に成功した事を語っています。

「ステージで女を熱狂させてるのは俺!」

「俺のラップの腕が鈍ることはない、もし鈍ったら銃を向けろ!」

「ブーイング受けてるダサいやつとは違う。」

「熱いトラックと完璧なフロウで熱狂させてやる!」

「俺は金持ち番付に入ってやる!」

と自分のラップスキルで成り上がった事を誇りに、これからも突き進む覚悟を感じます。

マイク一本で勝負してトップに立った自信とエネルギーをバチバチ感じます。

今後もガンガン行こうとしていた矢先、あんな事態になるとは…


この曲のテーマはコーラスの女性がガッツリ歌っています。

サビをビシッとキメている歌声はケリー・プライスです。

前述のフワフワスキャットも彼女の声ですね。

当時私は「歌上手いなこの人…」と思う程度でした。

その後彼女を知って、改めて聴いて「おお〜!彼女の声だ!」なんて楽しんだ思い出があります。

MVでおばちゃんのように見えましたが若かったんですね(失礼!)


さて、MVはなぜかいきなりゴルフの決勝の模様から始まります。

そういやこの頃タイガー・ウッズ旋風が巻き起こっていた時代ですかね。

タイガー・ウッズとこのMVが関係あるのか、ないのか…

まぁ、確かにゴルフの優勝は莫大な賞金が貰えるのでこの曲のテーマに合いますね。

パフ・ダディとメイスの演技も楽しめてコメディタッチでもあります。

特にメイスくんのしれっとした態度、好きですw


そして曲が始まると円筒状のセットで二人が踊ったりおどけたりと楽しそうな雰囲気です。

最初にステージ入場で歩く二人のキリッとした表情、カッコいいですね。

背後では爆風でお金っぽいものが舞い上がってバブリーな雰囲気です。

黒のタイムマシーンのようなステージも赤の衣装でカッコいいです!

屋外のダンサー達のシーンも花火や火炎などで盛り上がります!

インドア・スカイダイビングの場面、これが一番楽しそうです!

その間にもゴルフシーンがちょいちょい入ってきますね。

そして1番が終わってインタビューシーンになり、そこでこの曲のテーマとともに冷静になる…


と思った途端、再びイケイケなパフ・ダディのラップへと繋がります。

パフ・ダディとメイスのコンビ、ずっと見ていられるくらいウマが合ってる感じがします。

お互いを立てつつ後ろでアピールしたり、一緒の振り付けをしたり…

初めてこのMV見た時から「仲いいなぁ、この二人w」と思ってました。

赤、黄、銀のキラキラでダボダボな服、白だけの服、当時のヤンチャな人達はこんな感じの印象です。


2番が終わると突然ノトーリアスB.I.Gのドキュメンタリータッチのインタビューになります。

そこでもこの曲のテーマについて語っています。

「お金が増えるといろんな問題が出てくる。嫉妬や憎しみがナンタラカンタラ…」


そこからの重量級パンチなラップです!

前の二人が霞むくらいの強烈なラップは流石の一言!

私はラップスキルに詳しくないですが、素人が聴いても凄さがわかる凄さです。

残念ながらMV収録時には彼は既にあの世に行ったので過去の映像をモニターで映す演出になっています。

それまで色々おどけていた二人があまりはしゃがず彼のラップを楽しんでいるようにも見えます。


この曲をあえてノトーリアスB.I.G.が亡くなった直後にシングル化したのも意図的なのかもしれませんね。

キャッチーでウケ狙いな曲にも思えますが、ファンに向けてのメッセージかもしれません。

「彼の意思を引き継ぎ、これからも最高のトラックとフロウで突っ走ってやる!」

みたいな。


盛り上がって楽しそうなステージシーンも終盤はクールダウンなシーンが多くなります。

彼の死を乗り越える覚悟、見据える未来、そしてこの曲のテーマ。

そんな雰囲気を感じる締めも印象に残りました。


そして終わりの方までゴルフ場のシーンを結構引っ張っているのも仕事が丁寧です。


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